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ザ・カンムリワシ・ファイトVol.15 (白井義男追悼試合)
高橋良輔(金子ジム)90kg 引き分け オークランド・アウマタギ(オーストラリア) 115kg
東洋太平洋(OPBF)ヘビー級3位の高橋良輔対同級7位オーストラリアのオークランド・アウマタギの8回戦が2004年5月17日、東京・後楽園ホールで行われ、良輔は8回を果敢に戦い抜き、ドロー(引き分け)の判定となった。
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| 対戦成績4勝(2KO)7敗のアウマタギだが、このうちの2敗はOPBFチャンピオンのオケロ・ピーター戦。今年2月の試合では東洋太平洋タイトル12回戦を戦い、7回で敗れはしたものの激しく打ち合い強さを印象付けた。
アウマタギ戦10日ほど前のスパーリング中に左側のあばら骨にひびを入れた良輔は、最悪のコンディションで試合に臨んだ。こうなれば4ラウンドまで相手に触らせないでスタミナを奪い、5ラウンド
以降に仕留めに行くというのが戦略だった。 |
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1〜2ラウンドは計画通りの展開。リズミカルに足を使いながら、稲妻のようなジャブを突く。軽快なフットワークで左に回る。距離を取る。アウマタギは、右フックを大きく振り回してがむしゃらに突進。力任せに殴りかかる。良輔は試合後に言った。「ガードをしていても、一瞬、意識が飛ぶような重いパンチだった」
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| 良輔、スピードと機敏さで勝る。相手がはいってくる瞬間、的確なカウンターを打ち込む。細かいジャブで突進を止める。ワンツーをたたき込む。アウマタギのパンチが大きく空を切る。また空を切る。突進しながら力任せの右オーバーハンド。良輔、ひょいとかわす。当たったら確実に相手をマットに沈めてしまう重量パンチだ。アウマタギ、悔しがる。有効打は、良輔、はるかに勝っている。
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3ラウンド。アウマタギの突進は続く。まるでスタミナが強化されたかのようだ。良輔、接近戦を避ける。回り込む。離れる。しかし、ラウンド後半、アウマタギのパンチが良輔の右脇腹を強打した。一瞬、顔色が変わった。試合後、「その時、右あばら骨にメキッという音がした」と良輔は言った。右肘が下がる。激しい痛みをかばうかのようだ。相手は好機を逃がさない。右、左、右。びゅんびゅんと容赦なく拳を振り回し、ボディーを攻撃。良輔、必死に逃げる。 |
| 4ラウンド。ゴングと共にパンチを繰り出す良輔の表情から痛みの影は消えてい
た。実はこの時点で両方のあばら骨にひびが入っていた。アドレナリンが痛みを消す。軽快なフットワークが戻っている。一瞬たりとも鋭い目を離さない。閃光のような右ショートカウンターが何度も相手をとらえる。右ボディーにどんとお返しをたたき込む。蜂のように刺して蝶のように離れる華麗な戦い。しかし、肉の塊のようなアウマタギには効いている様子が見えない。打たれても、打たれても猛牛のように突進してくる。
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5ラウンド、良輔の戦略ではスタミナが切れたアウマタギを仕留めるラウンドである。しかし、前半の展開はほぼ4ラウンドと同じだった。刺しては離れる。繰り返す。25キロ体重差の巨漢から一瞬たりとも目を離さない。しかし、アウマタギのパワーは、少しも衰えない。パンチを振り回す。良輔、何度かコーナーに追いつめられた。硬くガードする。顔面に当たっていないのだが、力任せの左右の連打が、見るものを凍らせる。 |
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6ラウンド、いきなりアウマタギがパフォーマンスを入れてきた。大きなフックが空を切ると「ちくしょう、当たらない」と腕を振りおろす。良輔、右をボディーにたたき込む。と、体を曲げて「うっ、こたえた」の仕草。どっと笑いが湧き起こる。アウマタギ、けっこうな戦略家なのだ。猛獣のような突進、怒濤の攻撃で、良輔をコーナーに追いつめ、見るものを震え上がらせるかと思えば、茶目っ気たっぷりのパフォーマンスで、笑いを誘う。ジャッ
ジとて人の子。猛獣も人間に見える? |
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| 7ラウンド、前半は良輔の華麗な戦いが目立つ。アウマタギ、打っても、打っても打撃戦に引き込めず、空振りばかり。一方、的確なカウンターがアウマタギの顔面をとらえ続ける。いらつきがありあり。いきなり怒濤の突進。狂気のパワーが炸裂する。良輔、赤コーナーに追いつめられた。硬い防御。右左の連打。当たってはいないが、息が詰まる。両者の汗がリング下まで飛び散ってくる。良輔、回り込んで離れる。「ちくしょう、また逃したか」と膝を叩くアウマタギ。また笑い声が湧き上がる。だが気味の悪い緊迫感が膨らむ。ポイントを奪っては離れる良輔の戦略を「コイツは戦わないんだ」という印象に転嫁させているのではないかとの懸念。 |
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| セコンドのアドバイスを冷静に聞く良輔 |
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| パフォーマンスをするものの確実に良輔のカウンターはアウマタギの顔面をヒット |
| 最終ラウンド。良輔のうまさが光った。最高のタイミングで何度もカウンターをたたき込んだ。アウマタギ、一瞬バランスを崩す。直後にパフォーマンスで笑いを誘う。これまでの相手なら倒れていたほど強力なカウンターだった。だが打たれ強さはオケロ・ピーター戦で実証済み。もみ合いになった時、良輔の後頭部をグラブで叩いた。レフリーに注意されると、茶目っ気たっぷりの仕草で、2度も腰をかがめて謝った。憎めない奴との印象を与える。パフォーマンスがうまい。 |
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残念だった。だが大きな意味を持った試合でもあった。一つには、25キロ差の猛牛のような相手から、一瞬たりとも目を離さず、恐れも抱かず、刺しては離れの戦略を貫き通し、相手を翻弄し続けたこと。次に、パンチの美学とでも言いたいくらい美しい打撃フォームを最後までくずさず、的確なカウンターで相手を突き続けたこと。そして最後まで全く衰えを見せなかった稲妻のようなスピード、軽快なフットワーク。体調管理はボクサー最大の使命であるが、もしあばら骨にひびが入った状態でなければ、完全にノックアウト勝ちをしていただろうと思わせる戦いだった。 |
良輔は大きな自信と希望を抱いたことだろう。自分の強さを認めたことだろう。激しい練習とともに十分な休養を取り、怪我をしないようにさえすれば、どんな相手であれ、次、勝利を納めるのは早いラウンドであることを確信したことだろう。
(文・山口明雄、写真・山口明雄、高橋由爾、構成・竹内弥生) |
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